CROWN II Lesson 5
Mars―The Only Way Out?―
火星――唯一の打開策?――
われわれの環境を形作る決定によって、われわれは自分自身を形作るものである。
――ルネ=デュボス――
0.
人間がほかの惑星で暮らすことは可能であろうか?
われわれは火星に植民地を造ろうとするべきであろうか?
アキラはこれらの問いに答えようとレポートを書いた。
1.1
火星、すなわちかの赤き惑星は最も早い時代[=はるか太古の時代]から人間を魅了してきた。
古代人はそれ[=火星]と戦争の神とを同一視した。
近年、火星は広範囲に亙(わた)る科学的研究の主題となっている。
近未来において[=近い将来]、人間は火星の上を歩いているであろう。
1.2
火星はどのような種類の惑星であろうか?
それは太陽から4番目の惑星であり、しかも地球に最も近い惑星であるが、しかし、火星は地球よりもずっと小さい。
火星の1日は24時間37分で、(火星の)1年は(地球の1日の)687日分続く。
火星の表面は赤い砂塵(さじん)で覆われており、空はピンク色である。
オリンポス山のように高い山があり、それ[=オリンポス山]は高さ24kmである。
火星には凍った2酸化炭素や、ことによると氷から形成されている白い極冠がある。
もしも火星に水があるのならば、なんらかの形態の生命もまた存在する可能性もあるが、しかし、それはまだ発見されていない。
1.3
宇宙での綿密な調査による報告から、火星について多くのことをわれわれは知っている。
ところで、2018年5月に人間を火星に送る計画がある。
かの赤き惑星[=火星]に最終的に到着するとき、宇宙飛行士たちは180日間、宇宙空間にいることになる。
or宇宙飛行士たちは、180日間、宇宙空間にいると、かの赤き惑星[=火星]にようやく到着する。
彼ら[=宇宙飛行士たち]は571日間(火星に)滞在する予定である。
2.1
火星への旅行はどのようなものになるのであろうか?
宇宙飛行士たちは火星への旅行の途中に多くの困難な問題に直面するにちがいないであろう。
重力のない環境では、人間の身体と骨は弱くなる。
だから、宇宙飛行士たちは器具を使いながら運動しなければならない。
ほかの問題もまた存在するであろう。
宇宙船のような閉ざされた環境下にいると、充分に睡眠を摂り、元気いっぱいでいることが難しいと宇宙飛行士たちは気がつく。
→宇宙船のような閉ざされた環境下にいると、宇宙飛行士たちには充分に睡眠を摂り、元気いっぱいでいることが難しい。
*to find it difficult to do ...: ……することは難しいと気づく;……することは難しいとわかる▼直訳は左のとおりだが、「……するのは難しい;……するのは困難である」と、findの意味を全面に出すことなく訳すことも多い。
自分の家族と話をすることは、ストレスを処理する点で大いに役に立つと、ある宇宙飛行士は述べている。
2.2
火星は環境が地球のもの[=環境]に最も近い惑星であると知られているけれども、宇宙飛行士たちは火星に着陸すると自分たちがたいへん危険な状態にあるということに気づくであろう。
大気は95%が2酸化炭素である。
赤道の気温は最高15℃から最低で零下100℃となる。
大気の圧力[=気圧]は、火星では、地球よりもずっと低い。
それ[=気圧]は(地球上の)地上35kmのところに似ている。
そのうえ、太陽からの放射線の危険もあるであろう。
宇宙飛行士たちはそのような過酷な状況から自分たち自身を守るために重量のある宇宙服を身につけなければならないであろう。
3.1
火星を地球のような惑星に変えるプロジェクトは始まったばかりである。
このプロジェクトは「テラフォーミング」と呼ばれている。
terraforming: テラフォーミング▼ほかに「惑星地球化計画」とも呼ばれる。terra-は「大地」、formingは「形作ること」で、原義は「大地創造」。
もしもそれ[=プロジェクト]がうまく機能すれば、人類は火星で暮らすことができるであろう。
3.2
火星の南極には2酸化炭素でできたドライアイスからなる広大な地域がある。
一部の科学者は、「温室」効果を生み出すことによって20℃まで気温を上げることが可能であると考える。
→科学者のなかには、「温室」効果を生み出すことによって20℃まで気温を上げることが可能であると考える者もいる。
orなかには、「温室」効果を生み出すことによって20℃まで気温を上げることが可能であると考える科学者もいる。
彼ら[=こうした科学者たち]は、火星で見つけられる材料から作られるPFC(perfluorocarbon)を使うであろう。
→こうした科学者たちは、火星で見つかる材料で作るPFCを使うであろう。
気温が上昇するにつれて、ドライアイスが融け、2酸化炭素が大気中へと出て行くのであるが、そこ[=大気中]では、それ[=2酸化炭素]は「温室」効果ガスとして機能し、なおいっそう大気を暖めるであろう。
3.3
科学者たちは、火星にはかつて巨大な海があり、水は今でも凍った地中にあると考えている。
数百年以上かけて、気温が上昇するにしたがって、地中の氷は融け、水がその惑星[=火星]の表面を覆うであろう。
3.4
この水は蒸発して雲を形成し、雲は雨を生み出すであろう。
雨は空気中の赤い砂塵(さじん)を洗い流し、空の色はピンク色から青色に変わるであろう。
プランクトンを放流し、森林を創り出すことによって、人間を含めた生物が必要とする酸素を生み出すことがわれわれに可能になるであろう。
4.1
われわれはスペースコロニー[=宇宙の植民地]を建設しようと努力すべきなのであろうか?
4.2
著名な科学者スティーブン=ホーキングは、地球規模の温暖化のせいで(西暦)3000年という年までに人類は滅亡するであろうと考えている。
唯一の打開策は、地球から去ることであると彼[=スティーブン=ホーキング]は考えている。
4.3
ロバート=ズブリンという、人間が生活できる環境へと火星を変えるプロジェクトのリーダーはつぎのように述べている。
「人類はアフリカで生まれました。
今では、われわれは(地球上の)世界中で暮らしています。
いつかある日、生命の種を撒(ま)き散らしながら、われわれは惑星間を旅行するであろうと私は考えています」
*訂正しなければと思いつつ、忘れていました。この文を訳したとき、たとえばデブリ(宇宙のゴミspace debri(s))やメテオロイド(宇宙塵)が衝突したとか、太陽電池が故障したとかして、船外活動を余儀なくされたときに、宇宙船から微生物やバクテリ アなどの付着したものが宇宙に出て行くというのを想像して、上のような訳にした。それで疑問を抱いていなかったのだが、火星に植民地を建設する話なのだか ら、火星に到着した人類が火星で生命の種を広めることを言っていると高校の先生に言われた。そうなると、下の訳となる。
→いつかある日、われわれは惑星間を旅行して、生命の種を撒き散らすであろうと私は考えています」
4.4
しかしながら、スペースコロニー[=宇宙の植民地]を造ろうと努力することの前に地球上の問題点を解決しようと取り組むことによって地球を救うためにわれわれができる最善のことをわれわれはすべきであると主張する人々もいる。
実際、われわれは、(たとえば)大気汚染や地球規模の温暖化や人口過剰といった多くの問題に、今や、直面しているところである。
もしもわれわれが地球上で暮らし続けたいと思うのであれば、これらの問題をわれわれは解決する必要がある。
4.5
21世紀に、宇宙への大いなる旅行が始まったばかりである。
われわれが宇宙に植民地を建設するにせよ、しないにせよ、われわれには宇宙から学ばなければならないことがたくさんある。
未知の世界への扉はわれわれの前でちょうど開き始めているところである。
〔了〕
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