CROWN I Lesson 5
Diving into Mystery
神秘へのダイビング
われわれが経験できる最も美しいものは、神秘的なものである。
それ[=神秘的なもの]は、すべての本物の芸術と科学の源泉である。
―アルベルト=アインシュタイン―
0.1
アキラは夏休みに与那国島へ行った。
彼は神秘的な「遺跡」について、クラスのみんなに話す。
1.1
今日、ぼくは与那国島への旅行について話したいと思います。
この島がどこにあるのか(ということを)みなさんは知っていますか?
こちらにある地図で(みなさんが)目にすることができるように、それ[=与那国島]は、日本のはるか西にあります。
ぼくが特にこの島を選んだ理由は、海岸近くの海底で見つけれた巨大な石の構造物に関して耳にしたことがあったからです。
この場所は、テレビや書籍や雑誌でしばしば取り上げられています。だから、みなさんのうちの何人かはそれについて既に知っているかもしれません。
→この場所は、テレビや書籍や雑誌でしばしば特集されています。だから、それについて既に知っている人もいるかもしれません。
ぼくはこの神秘的な構造物について、ある程度調査をおこないたいと思いました。そして、それこそが、ぼくがこの島を訪れようと決心した理由です。
2.1
みなさんのうちで、その場所をこれまでに目にしたことがない人のために、何枚かのスライドを用意しています。
それらを見てみましょう。
2.2
最初のもの[=最初のスライド]は、構造物がどのように見えるのかを映し出しています。
→最初のスライドには、構造物がどのように見えるのかが映っています。
それ[=構造物]は幅150メートル、高さ26メートルです。
構造物の頂上は、1メートル海面に出ています。
このスライドからみなさんはどんな印象を抱きましたか?
みなさんは、それは自然のものだと思いますか、それとも人工のものだと思いますか?
(私たちが)この質問に答えようとする前に、もっと念入りに見てみましょう。
2.3
つぎのスライドは、門のように見える石の構造物を映し出しています。
→つぎのスライドでは、門のように見える石の構造物が映っています。
もしも、こちらを泳いで通り抜けると、真正面に立っている一組の大きな石が見えます。
さて、こちらのもの[=こちらのスライド]は、幅が約5メートルあるいは6メートルの道路のように見えるものを映し出しています。
→さて、こちらのスライドには、幅が約5メートルあるいは6メートルの道路のように見えるものが映っています。
進み続けると、階段に到着します。
それ[=階段]の上には、こちらで目にすることができるように、平らな広々とした場所があります。
2.4
その構造物の上部には、ほかに興味深い特徴があります。
このスライドは、水路であるように見えるなにかを映し出しています。
→このスライドには、なにか水路のように見えるものが映っています。
亀のように見える2つの大きな岩もあります。
→亀のように見える大きな岩も2つあります。
最後のスライドは、幅3メートルの丸い石が土台の上に鎮座している場所を映し出しています。
→最後のスライドには、幅3メートルの丸い石が土台の上に鎮座している場所が映っています。
3.1
これらの特徴が人工のものであるならば、それらの目的は何だったのでしょうか?
→こうした特徴が人工のものであるならば、そうした特徴がある目的は何だったのでしょうか?
研究者のなかには、この石の構造物は要塞であったと信じる[=考える]者もいます。
structure: 構造物▼この文の直前で、人工物なのか、自然のものなのかがわかっていないということが述べられている。だから、「建造物」と訳すのは誤りである。なぜな ら「建造」されたものは、人工物にほかならないからである。ただ、「構造物」だと、見なれない・聞きなれないということで、ついうっかり「建造物」として しまうようだが。
また、亀の形をした岩と土台の上の丸い石のせいで、それは神社であったと述べる研究者もいます。
それが実際に人工のものであったとしても、その構造物がなぜ造られたのかを、だれもまだ充分には説明できていません。
3.2
さて、この構造物が人工のものであるならば、それは陸上で造られたにちがいありません。
実際のところ、約20万年前、沖縄と中国の間には長い陸橋があったと科学者たちは信じて[=考えて]います。
そのとき以来、神秘的な構造物の周辺の地域は何度か水面下にありました。
→そのとき以来、神秘的な構造物の周辺地域は何度か水没しました。
約6,000年前に、それは再び水没し、その地域の現在の地質学的特徴が形成されました。
もし、そうであるならば、その構造物は6,000年前よりも以前のあるときに形成されたことになります。
→そうであるならば、その構造物は6,000年以上も前に形作られたことになります。
ある科学者は、それは1万年以上前に造り出されたと主張しさえします。
→それは1万年以上前に造り出されたとさえ、ある科学者は主張しています。
もしもそれがそれほどまでに古いのであるならば、今では失われてしまっているすこぶる古い文明がかつて存在したということを、そのことは意味します。
→それほどまでに古いのであるならば、今では失われてしまっているすこぶる古い文明がかつて存在したということになります。
4.1
一部の科学者は、この石の構造物は人工のものではあったとは信じ[=考え]ません。
→科学者のなかには、この石の構造物は人工のものであったとは信じない[=考えない]ものもいます。
証拠は充分に説得力のあるものではないと彼らは主張しています。
怒涛の直訳:一部の人々は、失われた文明に関する物語は、常に、1粒の塩と一緒に食べなければならないと言っています。
→なかには、失われた文明に関する物語は、常に割り引いて聞かなければならないと言う人もいます。
*Some people say that stories about lost civilizations should always be taken with a grain of salt.
受動態のままだと訳しにくい場合は、能動態に書き換えてから、主語を省略して訳す。
= Some people say that we should always take stories about lost civilizations with a grain of salt.
私たちは失われた文明に関する話を、常に割り引いて聞かなければならないと言う人もいます。
4.2
しかしながら、つぎのことをちょっと(私に)言わせてください。
海底にニライカナイと呼ばれる場所があり、それは自分たちの祖先がかつて住んでいた場所であると、沖縄の人々は長い間、信じていました。
なかには、それは、浦島太郎と彼が訪れた水中の城[=龍宮城]の伝説に関係していると述べる人もいます。
私たちは伝説という形で、自分たちの歴史をしばしば伝えているので、ニライカナイの存在を信じることと、浦島太郎の伝説とは、古代の琉球でかつて暮らした人々の記憶を、ひょっとしたら反映しているのかもしれません。
*the belief in Niraikanai and the legend of Urashima Taro: ここの部分は、2通りの解釈が可能。
the belief in Niraikanai and the legend of Urashima Taro
(1) ニライカナイの存在を信じることと、浦島太郎の伝説 = ニライカナイ信仰と浦島太郎伝説
the belief in [Niraikanai and the legend of Urashima Taro]
(2) ニライカナイと浦島太郎伝説の信仰
the belief in ...: …を信じること;…信仰▼(2)の解釈を採る人は、この部分の精密な意味をとらえそこなっている。ややこしい英文の場合、名詞を動詞に直して考える。
the belief in ... → to believe in ...
to believe in ...は「…の存在を信じる」という意味である。「あなたは、神を信じますか?」はDo you believe in God?である。もちろん、to believe in ...で「…の価値を信じる」という意味もあるが、一般には「…の存在を信じる」の意味であろう。the beliefを辞書で引いて、たとえば「信仰」という訳語を選ぶだけだと、解釈を誤る可能性が高くなる。(2)の「ニライカナイと浦島太郎伝説の信仰」と してもなんら違和感が生じないかもしれないが、「…の存在を信じる」から、the belief in ...を「…の存在を信じること」と考え、「ニライカナイと浦島太郎伝説の存在を信じること」とすると、これはおかしいと気づくはず。そうです、浦島太郎 「伝説」は、伝説というかたちで既に存在しているのである。そうすると、(2)は誤りであると気づくはず。beliefの訳語に「信仰」を選ぶことはまち がってはいない。「ムー大陸信仰」「アトランティス信仰」という表現では、いずれも当該の大陸の存在を信じているからある。
4.3
浦島太郎が玉手箱、すなわち宝の箱を、水中の城[=龍宮城]から持ち帰ったことを私たちは知っています。
沖縄の海底から科学者たちは何を持ち帰るのでしょうか?
それは、人類の歴史についての私たちの理解において、大きな変化を引き起こすのでしょうか、それとも、「煙」にすぎないのでしょうか?
私たちは、ただ、成り行きを見守らなくてはならないでしょう。
5.1
ご清聴、感謝します。
〔了〕
掃除機496方式(英語名:HAL496 Systems)による英語などの学習方法を提唱するブログです。英文に関して、解説・対訳などの掲載を中心としています。訳し方は、そのときの状況によるので、直訳っぽいのもあったりします。転載及び2次使用可。(C) no rights reserved / aucun droits réservés / keine Rechte vorbehalten / 著作権全面放棄
3.08.2008
Diving into Mystery
登録:
コメントの投稿 (Atom)
-
▼
2008
(123)
-
▼
03
(28)
- New Faces, New Places(対訳)
- New Faces, New Places
- A Visit from Saint Nicholas (対訳)
- A Visit from Saint Nicholas
- When I Was Sixteen(対訳)
- When I was Sixteen
- When I Was Sixteen(註釈)
- Abu Simbel ― Rebirth on the Nile ―
- Abu Simbel―Rebirth on the Nile― 一文ごとの語順整序
- Abu Simbel ―Rebirth on the Nile―(対訳)
- Punana Leo ―A Voice of Hawaii―(対訳)
- Punana Leo ―A Voice of Hawaii―(註釈)
- Punana Leo ― A Voice of Hawaii ―
- Diving into Mystery(対訳)
- Diving into Mystery(註釈)
- Diving into Mystery
- Fast Food
- Living with Chimpanzees (対訳)
- Living with Chimpanzees
- Not So Long Ago(対訳)
- Not So Long Ago(註釈)
- Not So Long Ago
- Good Ol' Charlie Brown(対訳)
- Good Ol' Charlie Brown(註釈)
- Good Ol' Charlie Brown
- The Green Door
- The Making of Scientific Revolutions (対訳)
- The Making of Scientific Revolutions
-
▼
03
(28)
- 掃除機庵主人
- 和歌山県, Japan
- 早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。
0 件のコメント:
コメントを投稿