掃除機496方式(英語名:HAL496 Systems)による英語などの学習方法を提唱するブログです。英文に関して、解説・対訳などの掲載を中心としています。訳し方は、そのときの状況によるので、直訳っぽいのもあったりします。転載及び2次使用可。(C) no rights reserved / aucun droits réservés / keine Rechte vorbehalten / 著作権全面放棄

3.07.2008

Fast Food

Fast Food
ファースト=フード
(スピード時代)
83A
天気のよい朝だった。

あるお金持ちの男性――彼をアール氏と呼ぼう――が、庭の垣根の向こう側から自分に話しかける声を耳にしたとき、庭で忙しくしていた。
*あえて、逆に訳したほうが日本語としては自然だと考える人もいる。
「ある金持ちの男性――彼をアール氏と呼ぼう――が庭で忙しくしていると、庭の垣根の向こう側から自分に話しかける声を耳にした」
そう考える理由はつぎのとおり。アール氏が「庭で忙しくしている」時間のほうが、継続的なものであり、いわば、時間軸に沿う「線」のようなものであり、一 方、「話しかける声を耳にした」のは、いわば、時間軸上の「点」のようなものである。たとえば、「…しているときに、~した」という日本語の場合、「…」 には、継続的な「線」的動作が、「~」には、「点」的動作がくるのが、自然な日本語であるという考えにもとづいている。▼ただし、この考えもまもなく廃れ るであろう。たとえば、「手紙をしたためる」というのが正しい日本語で「手紙を書く」はまちがっているとされたのだが、write a letterを目にするうちに市民権を得ている。また、相手の名前を呼びかけるのは、日本語では文の最後につけるものであるという「常識」は消え去り、文 頭で名前を呼びかけてもよいということなっている。さらには、たとえば、William and Henry went to the Buckingham Palece.は「ウィリアムとヘンリーはバッキンガム宮殿に行った」と訳すと、Henry went to the Backingham Palace with William.と区別がつかなくなるから、「ウィリアムとヘンリー
はバッキンガム宮殿に行った」としなければならないとされていたが、あまりにも2番目の「と」を書かない人が多いので、明治政府は明治30年代に太政官令で、2番目の「と」を略すなと命じたくらいである。
to hear O doing: Oが…しているのを耳にする
to speak to O: Oに話しかける
the other side: 反対側

見知らぬ人物が彼を見ていた。

83B
「植物がお好きなようですね」とその男が言った。
*You seem to like plants. = It seems that you like plants.
"...," the man said.: the man said のところは、said the man.と倒置になるのが一般的だが、倒置となっていなくても誤りではない。ただし、the manの部分つまり主語の部分が長い場合は必ず倒置となる。
たとえば
1) "...,"
said the man who had the super powder.
2) "...,"
the man who had the super powder said.
「……」と極上の粉を持っている男性が言った。
2) は読みにくいですね。
なお、主語がheやsheやIなどの人称代名詞の場合は、ごく特殊なものをのぞけば、倒置は行なわれない。

83C
「実に、好きですよ」とアール氏は返答した。

「ええっと、じゃあ、私はこちらにあなたの興味を惹くものを持っています」
→「ええっと、じゃあ、こちらに、あなたの興味を惹くものがあります」
to interest O: Oの興味を惹く;Oに興味を持たせる;Oに興味を起こさせる

83E
「何をお持ちですか?
→「なにがあるんですか?

園芸用品を売っているのですか?」

83F
「園芸用品よりもずっとよいものです。――この極上の粉です!」
*something much better than ...: somethingなど、-thingで終わる語に形容詞がつくときは、後ろに置かれる。muchはbetterを強調していて、「ずっと」の意味。betterはもちろんgoodの比較級。
something: なにかあるもの
→something good: なにかよいもの
→something better than ...: なにか…よりもよいもの
→something much better than ...: なにか…よりもずっとよいもの

種を植えたあとに、この粉(のいくらか)を地面に撒くだけです。
*plantとあるので「植える」の訳語を採用したが、「種を蒔く」ならば、to sowだろうと思ったし、また、to seedという語もある。COBUIDのplantの項によれば、種のときに、小さいものでも地面に穴をあけたりする場合にはplantでよいようだ。
to sprinkle: …を撒く▼身近な日本語にスプリンクラーsprinklerという水を撒き散らす機械がある。to sprinkleという動詞は、普通の単語集には載っていないと思われるが、スプリンクラーから推測できるはずだということで、中堅大学などの入学試験で は、直接問われるわけではないにしても、長文の中にこういう種類の単語が入れ込まれていることが多い。普段から、カタカナ語には気をつけておくべきだとい うことです。

種がどんなに急速に成長するか(ということ)に、あなたはびっくりしますよ」
この文You'll be amazed at
how quickly the seeds will grow. のうちのhow quickly the seeds will growは、それ全体で前置詞atの目的語部分となっている。前置詞の目的語になれるのは一般には名詞である。how quickly the seed will growという節全体が前置詞atの目的語となっているから、名詞と同じ働きをしているということで、how quickly the seed will growは名詞節であるとされる。

83G
その男は門を開け、庭の中へと歩いて入ってきた。

彼は白い粉でいっぱいの瓶を持っていた。
*a bottle {filled with white powder} = a bottle {which was filled with white powder}
(なお、{...} でくくられた部分は、直前の語句を修飾することを示す)
filled はto fillの過去分詞で、a bottleを修飾する過去分詞の形容詞用法。

アール氏は笑った。

「なにかおどぎばなしからやってきたもののようですな!
Sounds like something out of a fairy story!
= It sounds like something out of a fairy story!
*会話では、Itは省略されることがある。それを知らなければ、この文を「音はなにかを好む」と読んでしまい、なにがなんだかわからなくなる。
It sounds like+名詞
It sounds+形容詞
…のように聞こえる;…のようだ
a fairy: 妖精
a fairy story: おとぎ話▼a fairy taleのほうが普通だと思う。
原作ではこの箇所はつぎのようになっている。
まるで、花さかじいさんのような話ですね。
これは、「白い粉」が花さかじいさんが撒く灰のように思えたからであろう。
ちなみに講談社インターナショナルから出版されている
THE CAPRICIOUS ROBOT(きまぐれロボット)に納められている英訳ではつぎのようになっています。
From your talk you sound as if you're the world's greenest thumb.
君の話しぶりからすると、まるで君は世界一の園芸の才能の持ち主のようだね。
green thumb(緑色の親指)は「園芸の才」の意味だが、同時に、「金儲けの才」の意味もあり、オチを意識してこう訳したのでしょう。うまい訳ですね。

私がそんなことを信じるだろうとは、本気では思ってはいないですよね?」

83I
「見ることは信じることです。
→「百聞は一見にしかずですよ。
Seeing is believing.
文法書の動名詞の解説でよく見かける文。原作にはこれに該当する部分がない。動名詞の復習をしつつ、生徒の理解がどのくらいかを試すのにはよいであろう。

さあ、あなたにお見せさせてください。
→さて、あなたにごらんにいれたいものがあります。
*Here: ほら▼人の注意を惹くときに使う。教科書のつぎの文のhereは「ここに」の意味で、両方の区別をしっかりつけるように指導するのが目的で、続けざまに意味の違うhereを入れたのでしょう。
let O do: (自由に)…させる▼日本の英語教育では、let O do, make O do, have O doをむやみに教えたがるが、原作から英訳したRobert Matthewさんの訳でもlet me show youを使っている。
教科書
Seeing is believing. Here, let me show you.
百聞は一見にしかずですよ。さて、あなたにごらんにいれたいものがあります。
Robert Matthewさんの訳
If you don't believe me, let me show you here and now.
私の言うことが信じられないというであれば、今ここでごらんにいれます。
原作
おうたがいでしたら、いま、ここでごらんに入れましょう。

こちらに(いくつかの)種があります。

これらは西瓜です。

これらは苺です。

これらはトマトの種です。

84B
「ええっと、じゃあ、あなたが種を植えると同時に、これらの朝顔の種も(いくつか)植えさせてください」
*ここで朝顔の種も植えさせるのは、見知らぬ人物が持ち込んだ種に手品かなにかのタネが仕込んであるかもしれないと考えたから。

84C
「よろしいですよ!」
*= It is very good!

84D
その男はショベルを取り出し、地面を掘り返し始めた。

彼は(いくつかの)種を植えた。

それから、彼は地面に(いくらかの)粉を撒いた。

アール氏はこうしたことすべてを見守った。

84E
「これは冗談ですか?」

84F
「さて、少しの間、ちょっとだけ我慢してください」
or 「さて、1分間、ちょっとだけ我慢してください」
for a minute: 少しの間▼文字通りには「1分間」だが、Just a minute.で「ちょっと待ってください」と同様で、数字どおりの時間の長さではないのが普通。ところが、このやりとりでは、「1分間」と訳しても意味 がつうじているように思える。そこで、この英文の原作である星新一氏の「スピードアップ」(『きまぐれロボット』所収)と、Robert Matthew氏がそれを英文にした "The Speed-up"で当該箇所を確認するとこうなっている。
---
「まあ、少しお待ち下さい」
"Just wait a littel while."
「少しといっても、一週間ぐらいはかかるのだろう」
"Your little while will turn out to be a week, I expect."
直訳:「あなたの(言う)少しは、1週間だということが判明するだろうと、私は予想するね」
「とんでもありません。ほら」
"Not at all. Look!"
---
「1分間」と訳しても意味が通じるが、教科書のこの文章を担当した人は「少しの間」のつもりでfor a minuteとしたにちがいない。それが普通なんですけど。

84G
「少しの間だって! むしろ1週間くらいかかるでしょう、たぶん!」
or「1分間だって! むしろ1週間でしょうな、たぶん!」
*more like ...: むしろ…に近い

84H
「いや、いや、ごらんください!」

84I
彼は地面を指差した。

彼は自分が見ているものが信じられなかった。

新芽がすでに地面から出てきていたのだ。

84J
「これは驚くべきことです!

ある種の手品にちがいない」

84K
これは手品ではまったくありません。

私はこっそり用意しているものは何もありません。
→タネもしかけもありません。
*up one's sleeve: ひそかに手元に用意して
have ... up one's sleeve: (いざというときのために)こっそり…を用意している

あれらはまさしく私が先ほど植えたのと同じ種です。
Those are exactly the same seeds {I just planted}.
= Those are exactly the same seeds {
that I just planted}.
先行詞にthe sameがあれば、関係代名詞にはthatしか使えず、whichは使えないとされる(が、使っている例を見たことがある)。

もしもお望みならば、それら[=生えてきた新芽]に触れてもかまいません。

84L
アール氏はそれらに触れてみた。

それらは本物であった。

彼[=アール氏]が見ているときでさえ、植物は急激に成長し続けた。
*to shoot up: 急速に成長する

84M
「これはじつに驚くべきことである」

86A
「これらの種は普通の種です。

驚くべきものは、粉のほうです。

たいへんな時間と労力がかかりましたが、ごらんのとおりです。世界で最も速い食べ物です[=世界で最も速く成長する食物です]
It takes ...: (時間などが)かかる;…を必要とする
here it is: ほら、ここにありますよ
*ここで「速い」なのか「早い」なのかの問題がある。英語のfastは基本的に「速い」で、earlyは「早い」だが、いつでもそうとは限らない。植物の 成長の「はやさ」には「早い」を使うのが日本語では普通だが、しかし、この話ほどの「はやさ」ともなると、「最も速く成長する」としたくなるところであ る。原作者の星新一氏も「速い」「早い」の使い分けに苦慮したらしく、原作では、どちらも使わず、「スピードアップ」「スピード」を使って、漢字の使い分 け問題を避けている。

86B
3時間以内に、植物は花開き、実をつけ始めていた。

その男性は果物と野菜のうちのいくつかを摘み取り、それらをアール氏に手渡した。

86C
「それらの味見をしてください」

86D
アール氏は自分の口の中に苺を入れた。

それはおいしかった。

86E
「うむ。悪くないな。なんという素晴らしいアイデアなんだ!
*Not bad. = It is not bad. なお、アメリカ人がIt's very good!という状況で、イギリス人はIt's not so bad.という傾向があるとされる。

毎日、私たちは食卓で新鮮な果物と野菜を食べることができる。
*have: 食べる
on the table(テーブルで;食卓で)は、「食事中」という意味のat tableのほうがよいと思うのだが。

86F
「もっと召し上がってください」

86G
アール氏はそれらすべて――苺、西瓜、トマト――を試食した。

同時に、彼はつぎからつぎへと咲いていく朝顔を見ていた。

86H
「やれやれ! 満腹だ。

ところで、あなたは、その驚くべき粉を売りたいとは思わないですよね?

私は自分の工場のうちのひとつでそれを製造することができます。

世界中の人々が喜ぶでしょう。

それに、もちろん、副業としてすこしばかりのお金を稼ぐことができなくもありません」
*on the side: 副業として;片手間に

86I
「実をいうと、それこそがまさに私がここにいる理由です。

おわかりかと思いますが、自分の研究の対して多額の資金を費やしましたし、それに……」

87B
「それ以上はなにも言わんでくれ!」
→「もうなにも言わなくていいですよ」or「わかりました」
*Say no more.: ここでは、お金持ちのアール氏は、すでに買い取るつもりでいたから、このような台詞を言ったわけだが、そのまま訳すと、変な感じがするので、英文から離れて、こういう状況ではどのように言うのかを考える。

87C
ふたりは直ちに同意した。

アール氏は巨額の小切手を手渡した。
*a large check: 大きな金額の(書き込まれた)小切手

男は粉の入った瓶を手渡した。

ふたりは握手して、さようならと言った。

87D
アール氏は家の中へと戻っていった。

彼はたいへん喜んでいた。

87E
「仕事に戻ろう。

この素晴らしい代物を市場(しじょう)に出ている状態にすることができるのが早ければ早いほどよい。
→この素晴らしいものを市場に投入するのが早ければ早いほどよい。
もう少しくだけた訳にすると→この素晴らしいものを売りに出すのが早ければ早いほどよい。
*この文はit isが省略されていると考えられる。
= The faster I can get this amazing stuff on the market, the better
it is.
The+比較級、the+比較級: ~すればするほど…
cf. The sooner, the better: 早ければ早いほどよい。
get+目的語+補語: 目的語を…(の状態に)する。
amazing: 驚くべき;すばらしい
stuff: もの;代物;ものごと▼stuffとstaff(スタッフ;職員)を間違える人は多い。
on the market: 売りにでている;売りに出されている;市場に出ている

しかし、まず、昼ごはんを(いくらか)食べたほうがよいだろう。

88A
アール氏は突然、怪訝そうに思ったようであった。

あれほど多くを食べてからたったの数分後に、なぜ、彼は空腹であると感じているのであろうか?

88B
「ちょっと待てよ!

私は間違いを犯したかな?

この(成長するのが)速い食物は、すべての点で速いにちがいない。
*in every way: すべての点で;あらゆる面で▼wayには「点;面」などの意味がある。

それが成長するときも……

それを食べるときも……
*you: ここでのyouは「総称人称のyou」と呼ばれるもので、「(話相手を含む)人一般」を示す。ここではアール氏の独り言なので、話し相手は含まず、単に「人一般」を示していると考えられる。

それからそれが……」

88C
彼は窓のところに走っていった。

(窓の)外の庭では、まず、朝顔が、それから西瓜と苺とトマトが急速に枯れつつあった。
*... were quickly dyingという過去進行形に違和感を覚えた人はいませんか? 私は違和感を覚えました。それほどまでに「速く」ものごとが進行するのであれば、この場面では、枯れてしまっているほうが説得力があると思いませんか? 原作を調べると
「窓から庭を見ると、アサガオをはじめ、もうみんなすっかり枯れてしまっていた」
となっています。またRobert Matthew氏の英訳では
He looked out of the window and saw that the morning glories and all the other fast-growing plants had already withered.
となっています。
高校1年生のこの時点では、過去完了は習っておらず、過去完了を使うのを避けるために、過去進行形にしているようです。過去進行形に違和感を覚えた人は、むしろ、言語感覚がすぐれていると思います。

〔了〕

Fast Foodの原作は、星新一さんの「スピード時代」という題名のショートショートで、『きまぐれロボット』という単行本・文庫本に掲載されています。原作を英語に訳したものは、講談社英語文庫から『きまぐれロボット―THE CAPRICIOUS ROBOT―』として出版されています。教科書の英語を読むよりは、こちらを読むほうがよっぽど勉強になると思いますが、人によっては、難しいかもしれない。




2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「それから西瓜と苺とトマトが休息に枯れつつあった。」
の休息は急速の間違いではありませんか?

掃除機庵主人 さんのコメント...

匿名さんへ(2012年8月15日)

ご指摘、ありがとうございます。
訂正しておきました。

自分の写真

和歌山県橋本市出身。世界文化遺産である高野山の麓です。
和歌山県立橋本高等学校を経て、早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業。
B型Rh+。天秤座。家紋は「丸に九枚笹」。
大叔父(おおおじ)は精鋭集団である帝国陸軍航空審査部所属で、「キ61(きろくいち)の神様」と呼ばれた坂井雅夫少尉。キ61は三式戦闘機「飛燕(ひえん)」のことである。

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