掃除機496方式(英語名:HAL496 Systems)による英語などの学習方法を提唱するブログです。英文に関して、解説・対訳などの掲載を中心としています。訳し方は、そのときの状況によるので、直訳っぽいのもあったりします。転載及び2次使用可。(C) no rights reserved / aucun droits réservés / keine Rechte vorbehalten / 著作権全面放棄

10.19.2008

東京大学2000年(前期)大問1(A)

東京大学の易問なら、詳しい註や解説があれば、中学生でも訳せるのではと考えて、作成してみた。今のところ、中学1年生で訳しきったのは2人しかいない。「読めばわかる」といっても、量が多すぎると、読む気力が失せるようだ。

まずは英文だけのもの。ちなみに設問は、「次の英文の内容を4050次の日本語に要約せよ。句読点も字数に含める。」というもの。

What makes us specifically human?  The complexity of our language?  Our problem-solving strategies?  You may be shocked by my suggestion {that, in some very deep sense, 1language and 2some aspects of human problem solving are no more or less complex than the behaviors of other species}.  Complexity as such is not the issue.  Spiders weave complex webs, bees transmit complex information about 1sources and 2quality of nectar, ants interact in complex colonies, beavers build complex dams, chimpanzees have complex problem-solving strategies, just as humans use complex language.  Nor are our problem-solving skills so remarkable: there are human beings {who have perfectly normal human mental abilities}, but {who nevertheless are unable to solve certain problems {that a chimpanzee can solve}}.  There is, however, one extremely important difference between human and non-human intelligence, a difference {which distinguishes us from all other species}.  Unlike the spider, {which stops at web weaving,} the human childand, I maintain, only the human childhas the potential to take its own representations as objects of cognitive attention.  Normally, human children not only become efficient users of language; they also have the capacity {to become little grammarians}.  By contrast, spiders, ants, beavers, and probably even chimpanzees do not have the potential {to analyze their own knowledge}. 

つぎにひとつひとつの英文に解説をつけたもの。

1.01

What makes us specifically human?

What: 何が

make O C: OCにする

us: われわれを

human: 人の、人間の:人間らしい;人間的な

What makes O C?: 何がOCにするのであろうか?

specifically: 特に、明確に、はっきりと、具体的に:厳密に言えば、具体的に言うと

 

1.02

The complexity of our language?

The complexity: 複雑さ▼形容詞はcomplexだが、私としては、「複雑な」としては、complicate, complicated, complicatingなどのほうがformalでよいと思うのだが、日本の入試ではcomplexが好まれる。というのも、inferiority complex(劣等感)と勘違いする受験生が多いからであるが、東京大学あたりならば、そういうのでひっかかる受験生はいないと思うのだが。

A of B: BA」が基本だが「AB」と訳すべき場合もある。

our …: われわれの…

language: 言語;ことば

 

1.03

Our problem-solving strategies?

Our …: われわれの…

problem: 問題

solving …: 解くための…▼solve(解く;解決する)の動名詞。

problem-solving …: 問題を解くための…;問題を解決するための…;問題解決の…▼solve a problem(問題を解決する)を動名詞にする場合、動詞の目的語であるproblemをハイフン(-)でつないで、solveの動名詞solvingの前に置く。▼-ingの形のものには、現在分詞と呼ばれるものと、動名詞と呼ばれるものがある。「…するための」という意味の場合は、動名詞である。つぎのものが「…するための」の意味の動名詞の説明でとりあげられる。

a walking stick歩くための杖→杖

a sleeping car眠るための車両→寝台車

a sleeping bag眠るための袋→寝袋

strategies: strategyの複数形

strategy: 戦略、兵法、計画、作戦、計略、策略、方針、戦術、方策、方法▼基本となる訳語は「戦略」で、また、tacticsという単語があるが、これの基本となる訳語は「戦術」。「戦略」は、戦争に勝つための総合的・長期的な計略で、「戦術」は、ひとつひとつの戦いに勝つための個々の具体的な方法のこと。

 

1.04

You may be shocked by my suggestion {that, in some very deep sense, 1language and 2some aspects of human problem solving are no more or less complex than the behaviors of other species}.

You: あなた(がた)は

may …: …かもしれない

be shocked …: 呆(あき)れ返る、ドキッとする、ショックを受ける、愕然(がくぜん)とする

by …: …によって

my …: 私の…

suggestion: 提案、忠告、(考え):気味:暗示、示唆

that: 同格を示す接続詞。

my suggestion that …: …という私の提案;…という私の考え

in …: …における;…において

some …: いくらかの…;いくつかの…▼ここではsenseが単数形なので「いくらかの…」の意味。そこから「ある…」という意味にもなる。

very …: たいへん…;たいそう…;とても…;

deep …: 深い、深さ[奥行き]がある:深い洞察力(どうさつりょく)がある:意味の深い、深甚(しんじん)な、深遠(しんえん)な

sense: 意味、意義

in some very deep sense: あるたいへん深い意味で;ある非常に深い意味合いで

language: 言語;ことば

A and B: ABとが;AB

some …: いくつかの…;一部の…

aspect(s): 外観、景観、光景、様子、様相【名-5】形勢、局面、状況、側面、特徴

A of B: BA」が基本だが「AB」と訳すべき場合もある。

aspects of…: …の側面

human …: 人間の…

problem: 問題

solving: 解くこと;解決すること▼to solve(解く;解決する)の動名詞。

some aspects of human problem solving: 人間の問題を解決することに関するいくつかの側面;人間が問題を解決する際のいくつかの側面

are …: …である

no …: 決して…ない

more …: より大きな程度に◆manymuch の比較級

or …:~か、~ないし~、または、もしくは

less …: より少なく◆little の比較級

complex…: 複雑な、複合の、込み入った、手間のかかる

than …: …よりも

the behaviors (立ち居)ふるまい、行動、行動様式、行動パターン、行為、対応の仕方、態度、挙動、言動、素行、そぶり、構え方、接し方、行儀、品行、やり方、行状、日ごろの行い

A of B: BA」が基本だが「AB」と訳すべき場合もある。

other …: ほかの…

species: 種(しゅ)▼単数形も複数形もspecies。ここでは複数形

the behaviors of other species: ほかの種の行動様式

 

---------------------------------------------------------------------

 

A and B: ABとが;AB

▼たとえば、

「山本と田中が豊島園に行った」

Tanaka went to Toshimaen with Yamamoto.

山本と一緒に、田中が豊島園に行った。

Yamamoto and Tanaka went to Toshimaen.

山本と田中(の両方)が豊島園に行った。

のどちらなのかわからないが、

「山本と田中が豊島園に行った」

の場合、

Yamamoto and Tanaka went to Toshimaen.

である。

ABとが」と「ABは」の使い分けをきちんとしなさいということが明治30年代の官報(政府が出すお知らせ)に掲載されたことがあるが、今では、ほとんどの人は気にしていない。気にしたほうがいいと思うけど。

 

---------------------------------------------------------------------

 

S1 are no more complex than S2 S1 are no less complex than S2

S1 are no more complex than or no less complex than S2

S1 are no more complex or no less complex than S2

S1 are no more or less complex than S2

 

 まずは、no more 形容詞thanから。このあたりの説明は、基本的には『山口英文法講義の実況中継(下)【改訂新版】』(山口俊治著、語学春秋社)を参照している。例文もそのまま採用している。

 以下の英文に一瞥(いちべつ)を加えてもらいたい。

 

The baby is bigger than this doll.                ……(1)

赤ちゃんはこの人形よりも大きい。

赤ちゃん>この人形

 

The baby is not bigger than this doll.         ……(2)

赤ちゃんはこの人形より大きくない。

赤ちゃん≦この人形

 

(2)の文のnotnoに書き換えるとどうなるか?

noを使うと、感情的な否定・気分としての否定が伴う。たとえば、Crown II Lesson 6 “Singlish Bad; English Good”にあるSinglish is no good(シングリッシュはちっともよくない)のnoにも感情的な否定が含まれている。

このあたりのことを踏まえると、つぎのようになる。

 

The baby is no bigger than this doll.          ……(3)

赤ちゃんはこの人形と較べて、ちっとも大きくないよ。

赤ちゃん=この人形

 

(3)の場合、this dollのところには、bigger thanとあるならば、bigという概念にはあまりふさわしくないものが置かれる。つまり、

S1 is no bigger than S2.

S1が、決して大きくなく、結局は、「同じくらい」であるということを言いたいがための表現なので、S2には、「大きい」とは普通考えられないものが置かれる。

 

(×)The baby is no bigger than the universe. ……(4)

赤ちゃんは宇宙と較べて、ちっとも大きくないよ。

 

no bigger thanは、主語が実際は大きくはないということを伝えるためのものであるから、明らかに主語よりも大きいものが、S1 is no bigger than S2.S2に置かれることがないのが普通。(4)は、新情報を何も与えないものなので、たとえば、自分の実父(じっぷ)はどういう人かと訊ねられて「自分よりも年上で、しかも男性である」と答えるようなものである。

 

いずれせよ、

The baby is no bigger than this doll.

赤ちゃんはこの人形と較べて、ちっとも大きくないよ。

ということで、意味の上では「赤ちゃん=この人形」でありながらも、bigという単語の否定的な意味つまり「小さい」ということを伝えるものである。

 

では、

S1 are no more complex than S2.

が意味するのは、

S1S2と較べて、ちっとも複雑ではない」

ということであり、つまりは

S1は複雑さに関して、S2と同程度である」

ということであり、同程度であるとはいえ、S2には一般には「複雑でない」ものを置くことで、「同程度に単純である」ということを述べるものである。

 

次に

S1 are no less complex than S2.

の場合はどうであろうか?

lessが入ると、意味が取りにくくなるという人は多い。less complexを無理矢理に「より少なく複雑な」と解釈して、力技で誤魔化してもよいが、もっと簡単なのは、complexの反意語であるsimpleに置き換えて考える。つまり、less complexsimplerにする。

まずは「より少なく複雑な」と解釈する力技から。

S1 are no less complex than S2.

S1S2と較べて、より少なく複雑なわけではない」

これで意味が摑(つか)めるのであれば、それでいいが……。

つぎに、less complexsimplerに変えてから解釈する。

S1 are no simpler than S2.

そうすると、

S1S2と較べて、ちっとも単純ではない」

ということであり、つまりは

S1は単純さに関して、S2と同程度である」

ということであり、同程度であるとはいえ、S2には一般には「単純でない」ものを置くことで、「同程度に複雑である」ということを述べるものである。

 

ここで新たな問題が生じる。英文は次の2つの文がひとつになったものである。

S1 are no more complex than S2

S1 are no less complex than S2

S1 are no more or less complex than S2

S2のところには、no more complex than …であるならば、複雑とはいえないものが置かれ、no less complex than …であるならば、複雑なものが置かれるはずであるが、どちらもthe behaviors of other species(ほかの種の行動)になっている。

S1 are no more complex than S2

は、S2と較べて、同程度に単純であると述べ、

S1 are no less complex than S2

は、S2と較べて、同程度に複雑であると述べているわけだから、結局、複雑なのか単純なのかわからなくなる。ところが、ここで筆者が言いたいのは、どちらが複雑か、どちらが単純かなのではなく、基準の取り方次第で、どちらがどうであるとはいえず、むしろ、複雑さの点で(と同時に単純さの点で)、優劣をつけることができないということであり、したがって、たとえば駿台の青本の訳例では「その複雑さの点では、他の種の行動様式と全くもって変わりはないのである」となっているのである。

 

1.05

Complexity as such is not the issue.

complexity: 複雑さ

~ as …: …としての~

such: そのようなもの

as such:

(1) そういうもの[人]として, それとして, それなりに :

He was a foreigner and was treated as such.

彼は外国人だったので外国人として扱われた.

(2) あるがままの; それ自体

History as such is too often neglected. 歴史は単にそれ自体としては軽視されがちだ.

complexity as such: 複雑さそのものは;複雑さそれ自体は;

the issue: 問題(点)、論点、争点、課題、議題

 

1.06

Spiders weave complex webs, bees transmit complex information about 1sources and 2quality of nectar, ants interact in complex colonies, beavers build complex dams, chimpanzees have complex problem-solving strategies, just as humans use complex language.

spider(s): 蜘蛛(くも)

weave …: ~を織る、織り成す、編む、編み込む、張る、作り上げる

complex …: 複雑な…

web(s): クモの巣、クモの巣状の物:ウェブ、インターネット

bee(s): 花蜂(はなばち);蜜蜂(みつばち)

transmit …: ~を送る、運ぶ:~を伝える、伝達する

information: 情報▼数えられない名詞

~ about …: …に関する~

information about …: …に関する情報

source(s): もと、源、起点、水源(地)、原因

quality: 性質、特質、品質、資質、質、

sources and quality of …: …の在(あ)り処(か)や質

nectar: 果汁、おいしい飲み物、花蜜;花の蜜

ant(s): 蟻(あり)

interact: 互いに影響し合う、相互に作用する、互いに交流し合う、付き合う

in …: …において

colonies: <>の複数形

colony: 植民地、移住地、コロニー、移民、居留地、集落;〔生物〕 集団, 群生, コロニー; 群体

beaver(s): ビーバー;海狸うみだぬき・かいり

build …: 建てる、建造する、構築する、架設する

dam(s): ダム;

chimpanzee(s): チンパンジー;黒猩々(くろしょうじょう)

have…: …を持つ;…を備えている

problem-solving …: 問題を解くための

strategies: 戦略

just: ちょうど

as …: …のとおり

just as S …: ちょうどSが…するように;…と同時に、(ちょうど)であろうとおり、…の拍子に、途端に▼just as S 以下を先に訳してから、前の部分を訳すと直訳的になる。just as S 以下を後から訳す場合には、ちょっと工夫が要る。

human(s): 人;人間

use …: …を使う;…を用いる

language: 言語

 

1.07

Nor are our problem-solving skills so remarkable: there are human beings {who have perfectly normal human mental abilities}, but {who nevertheless are unable to solve certain problems {that a chimpanzee can solve}}.

 

Nor are our problem-solving skills so remarkable. = Our problem-solving skills are not so remarkable either.

 

nor: A B も~でない、そしてまた~ない、~もまた~でない

He isn’t tired.  Nor am I.

= He isn’t tired.  Neither am I.

= He isn’t tired.  I am not tired, either.

彼は疲れていない。私も疲れていない。

norneitherが文頭に置かれると、倒置が行なわれる。

our …: われわれの…;私たちの…;人間の…▼ここでは動物と比較してour …と言っているので、「人間の…」とするのがよい。

problem-solving …: 問題を解決するための…

skill(s): 技術

our problem-solving skills: 問題を解決するためのわれわれの技術▼1.03Our problem-solving strategies?(問題を解決するための人間の戦略であろうか?)というのがあり、ここで敢(あ)えて難度の高いstrategies (strategy)を用いてから、後になって、skillという比較的平易な語に置き換えている。このような手法は、とりわけ中堅大学とされる大学でよく使われる。

so: とても;たいへん;非常に;たいそう▼Norがあるので、「あまり…(ない)」となる

remarkable: 顕著な、注目すべき、驚くべき、目覚ましい、卓越した、並外れた、並大抵ではない

there are …: …がある;…がいる;…が存在する

human beings: 人間;人類▼直訳としては「人間的存在」という意味の表現。humanには名詞としての「人間」の意味もあるが、形容詞としての「人間の…:人間的な…」の意味もあり、ここでは後者の形容詞としての意味。beingには「存在」という意味がある。たとえば、ジャン-ポール=サルトルJean-Paul Sartreというフランスの哲学者の著書に『存在と無』というのがあって、これはフランス語ではL'Être et le néant(レートル=エ=ル=ネアン)なのだが、英語に訳されたものの題名はBeing and Nothingnessであった。だからbeingには「存在」という意味があり、a human beingならびにhuman beingsは、人間的存在(=人間)という意味がある。▼ところで、普通に英文を読む限りでは、a human beingならびにhuman beingsは、驚くほど見かけない。副島孝彦の『英文法のなぞを解く』によれば、社会学などの分野でのみ用いられる比較的特殊なものだそうである。ところが、たとえば、a human beingを知らない場合、語順整序の問題で、beingがあると、進行形を考えてしまい、泥沼にはまってしまうわけで、そうした理由から、ある特定の分野の論文を読まなければ、滅多に目にしないa human beinghuman beingsが多用されるようである。

there are human beings {who have }, but {who are unable to do … problems {that a chimpanzee can solve}}.: …を備えているが、しかし、チンパンジーが解ける問題を解くことができない人間がいる。

who …: 先行詞がhuman beingsである主格の関係代名詞

have …: …を持っている;…を備えている

perfectly: 完璧に

normal …: 正常な…

human …: 人間の…

mental …: 心の…、精神(上)の…:知力の…、知的な…

abilities: abilityの複数形

ability: 能力

who…: 先行詞がhuman beingsである主格の関係代名詞

nevertheless: それにもかかわらず、それでもなお、それでもやはり、とは言っても、そうは言うものの、このような次第ではあるが、いずれにせよ

S are unable to do … = S can not do …: Sは…することができない▼be unable to do = be not able to do

solve …: …を解く;…を解決する

certain …: ある…;特定の…▼「確かな」の意味もあるが、中堅大学を狙う受験生は、どういうわけか、こちらの意味しか憶えていないことが多く、「ある…;特定の…」の意味を知らないことが多い。そのため、中堅大学では、無意味にまでにと思えるほど、「ある…;特定の…」の意味でcertainを長文に入れてくる。なお、早慶以上になると、specific, particular, givenが用いられるようになり、certainはさほど用いられなくなる。これは、早慶以上になると、英米人、特にイギリス人の書いた評論などをそのまま出題するので、英米人の教養ある人がよく使う語の出題頻度が高くなるからである。

problem(s): 問題

certain problems: ある特定の問題

that …: problemsを先行詞とする目的格の関係代名詞

a chimpanzee: チンパンジー;黒猩々(くろしょうじょう)

solve …: …を解く;…を解決する

 

there are human beings {who have }, but {who are unable to solve certain problems {that a chimpanzee can solve}}.: …を備えているが、しかし、チンパンジーが解けるある特定の問題を解くことができない人間がいる。

 

1.08

There is, however, one extremely important difference between human and non-human intelligence, a difference {which distinguishes us from all other species}.

There is …: …がある;…がいる;…が存在する

however: しかしながら

one …: あるひとつの…

extremely: 極度に、極めて、非常に、すこぶる、とても、大いに

important …: 重要な…;大切な…

a difference between A and B: ABとの違い

human …: 人間の…

non-human …: 人間以外のものの…

intelligence: 知能、知性、知力▼情報、諜報、諜報機関という意味もある。入試では出題されない。

a difference between human and non-human intelligence: 人間の、ならびに人間以外のものの知性の違い;人間の知性と人間以外のものの知性の違い

a difference which …: すなわち、…する違い▼「すなわち」とつけるのは、この部分がa difference between human and non-human intelligenceの言い換えだから。

distinguish(es) O1 from O2: O1O2を区別する

us: われわれ▼ここでは特に「人間」あるいは「われわれ人間」としたほうがよい。

all other …: ほかのすべての…

species: 種▼単複同形だが、ここでは、前にall otherがついているので、複数形。

a difference which distinguishes us from all other species: すなわち、われわれ人間とほかのすべての種とを区別する違い

 

1.09

Unlike the spider, {which stops at web weaving,} the human childand, I maintain, only the human childhas the potential to take its own representations as objects of cognitive attention.

Unlike …: …と違って

spider: 蜘蛛(くも)

~, which …: ~であるが、それは…である▼関係代名詞の非制限用法。文頭にある語に、関係代名詞の非制限用法を使うと、訳しにくくなる。ここでは次の2通りの訳し方がある。

Unlike the spider, which stops at web weaving, …

直訳(1):蜘蛛とは違って、その蜘蛛は巣を作ることにとどまるのであるが、…

直訳(2):蜘蛛は巣を作ることにとどまるのであるが、その蜘蛛と違って

▼非制限用法の場合、機械的に訳すには、先行詞を訳してから、関係代名詞節を訳すのだが(直訳(1))、それでは読みにくいので、直訳(2)のように、関係代名詞節を先に訳すようにすると、いくぶん訳しやすくなる。また、文頭に非制限用法の関係代名詞節を置くことで訳しにくくなることを狙っているのは、関係代名詞節の中に、stop at doingという見慣れない表現を入れていることからもわかる。

stops at …: …の所で止まる[停止する・立ち止まる]、…に立ち寄る、…にとどまる、…に滞在する

web: 蜘蛛(くも)の巣

weaving < to weave …: 【他動】~を織る、織り成す、編む、編み込む、張る、作り上げる

web weaving: 蜘蛛の巣を織ること;蜘蛛の巣を張ること

the human child: 人間の子ども

and, …――しかも、…

maintain: ~を保持する、維持する、保つ:~と主張する◆他の人たちからの賛同が得られなく、また証拠を突き付けられても自分の信念が正しいということを力強く主張すること。▼maintenance(維持)との関係からか、maintainの「維持する」しか知らず、「主張する」を知らない受験生が中堅大学受験者に多いので、中堅大学ではむやみに多用される語である。

only …: ただ…だけが;~しか…しない

S has …: Sは…を備えている;Sには…が備わっている

the potential: 可能性、見込み、潜在能力【形】可能性がある、潜在的な、潜在力のある

to take O as C: O C と取る[受け止める・解釈する・考える]

its own …: 自分自身の…▼its own …the human child’s own …のこと。赤ん坊(baby)や犬(dog)など、理性が充分に備わっていないものはitで受ける。

representations: 描写、表示、表現【解説】動詞 represent(代表する)から派生した名詞。cross-section よりも知性を感じさせる語だ。ちなみに represent から派生したもう一つの名詞 representative は「代理人」「国会議員」のこと。

object(s): 対象

cognitive …: 【形】認識の、認知に関する

The problem required high-level cognitive thinking skills.

その問題を解くには高い知的思考力が必要だった。

attention: 【名-1】注意、留意、注目【名-2】心遣い、思いやり、配慮、世話、親切

to take its own representations as objects of cognitive attention: 直訳:それ自身の表現を認知上の注意の対象とする→自分自身が表現したことを認識対象とみなす

 

1.10

Normally, human children not only become efficient users of language; they also have the capacity {to become little grammarians}.

Normally: 普通は、普段は、通常は

human …: 人間の…

children: child(子ども)の複数形。

human children: 人間の子ども(たち)

not only …: …だけでなく▼not onlybut (also) ~で、「…だけでなく、~もまた」の意味になるのが一般的。中堅大学の長文では、not onlybut ~という具合に、alsoを省略したものしか登場しない。alsoを省略するだけで、意味がとれなくなる受験生が多いからである。▼ここでは、human children not only …; they also ~という形になっている。意味としては、「…だけでなく、~もまた」である。微妙に揺れる変化球という感じか。ちなみに、上記の英文を、従来型の入試問題ではつぎのように出題される。

Normally, human children not only become efficient users of language but (also) have the capacity {to become little grammarians}.

become …: …になる

efficient …: 効率的な、効率の良い、高効率の、効果的な

users of …: 直訳:…の使い手

language: 言語

to become efficient users of language: 直訳:言語の効果的な使い手になる→言語を効果的に使う人になる→言語を効果的に使えるようになる▼ofは目的格関係を表す。

not only become efficient users of language: 直訳:言語の効果的な使い手になるだけでなく→言語を効果的に使う人になるだけでなく→言語を効果的に使えるようになるだけでなく

they = human children

also …: ~もまた、同様に、また、~もやはり(やっぱり)

S have …: Sは…を備えている;Sには…が備わっている

the capacity: 収容能力、(引き受けられる)仕事の量、(潜在)能力、可能性、才能、素質、度量、力量、理解力、知的能力

to become …: …になる

little …: ちょっとした…

grammarian(s): 文法学者

 

1.11

By contrast, S1spiders, S2ants, S3beavers, and probably even S4chimpanzees do not have the potential {to analyze their own knowledge}.

contrast: コントラスト、対照、対比、正反対のもの

by contrast: それに反して、それどころか

spider(s): 蜘蛛(くも)

ant(s): 蟻(あり)

beaver(s): ビーバー;海狸うみだぬき・かいり

and: そして

probably: たぶん;おそらく

even: …でさえ

chimpanzee(s): チンパンジー;黒猩々(くろしょうじょう)

S do not have …: Sには…が備わっていない

the potential: 可能性、見込み、潜在能力【形】可能性がある、潜在的な、潜在力のある

to analyze …: …を分析する

their own …: 自分たち自身の…

knowledge: 知識

 

対訳

What makes us specifically human?

人間をとりわけ人間たらしめているものは何であろうか。

直訳:何が、われわれを特に人間的にするのであろうか?

The complexity of our language?

言語の複雑性か。

直訳:われわれの言語の複雑さか?

Our problem-solving strategies?

問題解決能力か。

直訳:われわれの問題を解決する戦略か?

You may be shocked by my suggestion {that, in some very deep sense, 1language and 2some aspects of human problem solving are no more or less complex than the behaviors of other species}.

ショックを受けるかもしれないが、私の考えでは、ある非常に深い意味合いでは、言語も人間の問題解決の一部の側面も、その複雑さの点では、他の種の行動様式と全くもって変わりはないのである。

直訳:あるたいへん深い意味で、言語と、人間の問題を解決することについてのいくつかの側面は、ほかの種の振る舞いと較べて、すこしも複雑ではないし、すこしも単純ではないという私の考えによって、あなたはショックを受けるかもしれない。

Complexity as such is not the issue.

複雑さそのものは争点とはならない。

直訳:そのようなものとしての複雑さは論点ではない。

Spiders weave complex webs, bees transmit complex information about 1sources and 2quality of nectar, ants interact in complex colonies, beavers build complex dams, chimpanzees have complex problem-solving strategies, just as humans use complex language.

蜘蛛は複雑な巣を織るし、蜂は花の蜜の在り処やその質について複雑な情報を伝達する。蟻は複雑なコロニーの中で交流している。ビーバーは複雑なダムを築くし、チンパンジーは問題解決の複雑な能力を持っている。これらは人間が複雑な言語を使いこなしているのと全く変わらない。

直訳:ちょうど人間が複雑な言語を使いこなしているのと同じように、蜘蛛は複雑な巣を織り、蜂は花の蜜の在り処やその質について複雑な情報を伝達し、蟻は複雑なコロニーの中で互いに交流しあっており、ビーバーは複雑なダムを築き、チンパンジーは複雑な問題を解決するための戦略持っている。

Nor are our problem-solving skills so remarkable: there are human beings {who have perfectly normal human mental abilities}, but {who nevertheless are unable to solve certain problems {that a chimpanzee can solve}}.

また、人間の問題解決能力はそれほど優れたものでもない。人間の中にも、完璧に正常な人間として知能を備えていながら、それでもやはり、チンパンジーが解けるような問題を解くことができない人もいる。

直訳:また、われわれの問題を解決する技術はそれほど優れたものではない。完璧に正常な人間の精神の能力を持っていながらも、しかし、それにもかかわらず、チンパンジーが解くことができるある特定の問題を解くことができない人間がいる。

There is, however, one extremely important difference between human and non-human intelligence, a difference {which distinguishes us from all other species}.

しかしながら、人間の知力と人間以外の生き物の知力の間にきわめて重大な違いが、人間をほかのすべての種と分かつ違いが1つある。

直訳:しかしながら、人間の知力と人間でないものの知力との間には、ひとつのきわめて重要な違いが存在しており、その違いはわれわれとほかのすべての種とを区別する。

Unlike the spider, {which stops at web weaving,} the human childand, I maintain, only the human childhas the potential to take its own representations as objects of cognitive attention.

蜘蛛は巣を作ってしまえばそれで終わりであるが、それと違って、人間の子どもには、しかも、これは人間の子どもだけであると私は敢えて言いたいのであるが、自分自身が表現したことを認識対象とみなす潜在能力が備わっている。

直訳:蜘蛛は巣を織ることにとどまるのだが、その蜘蛛と違って、人間の子どもは――そして、私は、人間の子どもだけであると主張するのであるが――自分自身の表現を、認識上の注意の対象として(とら)える潜在的な能力を持っている。

Normally, human children not only become efficient users of language; they also have the capacity {to become little grammarians}.

通常、人間の子どもは、言語を手際よく使えるようになるだけでなく、同時に幼い文法家になる素質を備えてもいる。

直訳:通常、人間の子どもは言語の効果的な使い手になるだけでなく、彼らはまた、ちょっとした文法家になる素質をも持っている。

By contrast, spiders, ants, beavers, and probably even chimpanzees do not have the potential {to analyze their own knowledge}.

これに対して、蜘蛛も蟻もビーバーも、おそらくはチンパンジーですら、自分自身の知識を分析する能力は持ち合わせていないのである。

直訳:それに反して、蜘蛛も蟻もビーバーも、そして、おそらくはチンパンジーでさえも、自分たち自身の知識を分析する潜在的能力を持っていない。

0 件のコメント:

自分の写真

和歌山県橋本市出身。世界文化遺産である高野山の麓です。
和歌山県立橋本高等学校を経て、早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業。
B型Rh+。天秤座。家紋は「丸に九枚笹」。
大叔父(おおおじ)は精鋭集団である帝国陸軍航空審査部所属で、「キ61(きろくいち)の神様」と呼ばれた坂井雅夫少尉。キ61は三式戦闘機「飛燕(ひえん)」のことである。

フォロワー